J-SHINE 小学校英語指導者認定協議会 主催
小学校英語教科化記念全国シンポジウム
J-SHINEの小学校英語指導者トレーナーとして、参加してきました。
2011年、小学校に外国語活動が新たな”領域科目”として導入されて以来、子どもたち自身の英語に対する寛容性がかなり高まっていることを実感することが多くなってきたように思います。
“寛容性”とは、”英語を使うことや勉強することを当たり前のこととして捉えている様子”を指していますが、そのように感じている子が近年、ますます増えてきている気がするのです。
英語を話そうとすることが恥ずかしいとか、照れ臭いと感じている子の割合が、ひところに比べると随分減ったような気がします。
2011年ごろを境に、定期的に小学校で英語の授業が行われるようになり、もしかしたら当時は、英語の授業の”アゲアゲな”(笑)世界観に気後れしていたクールな小学生もたくさんいたのではないかと思いますが、そこから約6年半の時を経て、小学生も一巡し、英語の授業が日常の当たり前の一部分としてしっかり根付いてきているのでしょう。
一方で、2011年に英語の授業が小学校で領域科目化された時を前後して、小学校のみならず、中学校、高校でも、「英語の授業を英語で行う」指針は打ち出されてきてはいるものの、直近の調査によると、「英語による言語活動時間の割合」は、全体の「75%以上」が13.9%、「50~75%」が33.3%で、合計しても47.2%と、半分以下となっているのが現状のようです。
また、英語で英語の授業を行なっていても、知識注入型の授業が依然として内容の大部分を占めているのも事実のようです。
音読、発音練習、文法、Q&Aによる教科書本文の内容理解、etc.
現状、ほとんどの中学校・高校で最も一般的に行われている授業の内容は、上記のような、知識として覚え、練習することが狙いになっている活動です。
どんなに英語で英語の授業をやっていても、たとえ50分ないし60分の授業を全て英語でやっていたとしても、それがただ単なる知識・技能の伝達であれば、「使える英語力」は絶対に身につきません。
思考力・判断力、表現力を高めるための教育は、生徒が主体的に、対話的に深い学びをするための環境作りを英語で行うことが大切なのです。
つまり、「Repeat after me.」といって復唱させる形での”英語による英語の授業”じゃ意味がない。
「What do you think?」と言って意見を求めたり、
「Let’s discuss.」と言って、対話形式で意見や考えをまとめ、交換し、発表させる。
子どもたちの、高校卒業時のそういった姿を見据え、その素地を養うことを目的に行なっているのが、教科化された小学校の英語教育の狙いだと思います。
少し話を戻すと、近年、特に小学生の英語力、英語によるコミュニケーション能力の底上げはかなり成功しているように見えます。
サカイイングリッシュスクールの生徒だけを見ているからでしょうか?笑
いえいえ、きっとそうではないと思います。
たまに、地域の小学校に視察に行かせていただき、授業の様子を見させていただいていますが、小学校での英語教育は、総じて、かなり成功しているように思います。子どもたちは惜しげも無く英語の授業が好きといい、算数、国語などの授業ではありえないほど活気のある(悪く言えば騒がしい!笑)、笑顔の溢れる授業展開がどこの小学校にも広がっています。
その下流となる教育現場である中学校や高校では、そういった様子とは打って変わって、英語はたちまち嫌いな教科の筆頭をひた走るようになり、教室では当てられまいと下を向く生徒が作りなす水を打ったような静けさの中、授業は展開されていく…
まるでホラーです。一体全体、本当にどうしてそうなってしまうのか。
中学校・高校での、高等英語教育が課題視されてはいます。
英語で英語の授業を行うことに関し「教える側の能力」が問題視されたり、大学入試が依然として旧態を保ち続けていることなどが、高等英語教育のコミュニカティブアプローチの妨げになっているなどというのが大方の見方です。
問題は問題として確実に存在しています。いますが、小学校でのコミュニカティブな授業展開が成功していることも事実です。
最近ふとしたときに、このまま小学生の英語力が伸び続けたら中学校英語はどうするんだろう、などと考えることがあります。
まさか、今のままの形を維持し続けることはできないでしょう。コミュニケーション能力が高まりに高まっている状態の子どもたちに対して、そこを活かす形での授業展開が受け入れる側の能力の問題で不可能であるからといって、伸びしろにフタをするようなことがあっては決してならないからです。
つまり、このまま我々が小学生に対しての教育にアツく取り組み、どんどん子どもたちの能力を高めることで、結果としてその小学生たちの押し上げによって下流工程、中学校・高校の教育状況が変わるなんてことがあるかもしれない?
まるで夢物語ですが。。。
大きなことや世の中の流れは、単一の要素では決して変わりえない。
ルールを作っても、実践されなければ変わらない。
しかし、いまの小学生が身につけている英語に対する寛容性は、少なくとも、その”大きな変化”のひとつの力強い要素となっていることは間違いないです。
今後もサカイイングリッシュスクールという教育現場において、あるいは小学校英語指導者として外部のイベントなどで、引き続き子どもたちの英語教育、とりわけコミュニカティブな学びの場の提供に力を注いでいくとともに、2015年から活動しているJ-SHINEの小学校英語指導者トレーナーとしても、「指導者の指導」にも力を入れ、日本人、英語ネイティヴの外国人の垣根なく、英語教育者の質の向上のための努力も続けていきたいと思います。