英語教育シンポジウム 〜日本の英語教育が変わる時〜
- 2016年2月1日
- Posted by: sakaienglish
- Category: BLOG
[英語教育シンポジウム ~日本の英語教育が変わる時~]
に参加してきました。
新たに聞いたことのまとめと考察が以下の通りです。
【学習指導要領改訂について】
H28年中に審議がまとめられ、年度内に中央教育審議会として答申されます。
学習指導要領の改訂は、小学校はH32年度から、中学はH33年度から全面実施予定とありますが、新学習指導要領に移行するには公示から3年必要とのことで、つまり本当にH28年中の答申がうまくいって、H29~H31の移行期間を経て、H32年度からの施行が可能になります。
決めないといけないことが山のようにある中で、H28年内に議論がまとまるのか、という懸念もあるようです。
この、学習指導要領の改訂に至ったのが、以下の日本の教育の現状です。
まずPISAの調査によると、15歳(中学卒業時。高1の春に調査)の日本の子供達の学力は、2006年から上昇に転じ、現在では、数学的リテラシー、読解力、科学的リテラシー全てにおいて、世界トップクラスに返り咲いているようです。(※これは、世界のトップに返り咲いていることを喜ぶのではなく、これを維持、そして向上していかなければいけないという新たな別の課題と捉えて向き合っていかなければいけませんね。)
一方で、高校生の基礎学力、学習意欲は1990年から年々低下傾向にあります。
これを打開するために、アクティブ・ラーニングの視点から授業改善を行い、具体的には「深い学び」「対話的な学び」「主体的な学び」の実現をにらみます。
【英語教育の抜本的強化について】
国の目標としては、高校卒業時までに英検準2~2級程度の英語力を身につける生徒の割合を50%に引き上げるとありますが、現状は32%だそうです。
それを実現するために、小・中・高それぞれの英語教育改革を、それぞれが教え方と内容において接続される形で進める必要があります。
小学校中学年(3・4年生)で、活動型授業を年間35時間。
小学校高学年(5・6年生)で、検定教科書を使う教科型授業を年間70時間。
中学校では、身近な話題について理解や表現、情報交換ができるコミュニケーション能力を養うための授業を年間140時間行うと同時に、H31年度から、全国学力テストに4技能型の英語力を問う試験が実施スタート。(※全国学力テスト自体は、現在国語と数学のみ、中3の4月に行っています。理科は3年に1度行われています。)
H31年度から、つまり、今年2016年の4月から中学生に上がる子たちが中3になった時から施行されます。
我々大人世代は、「言語形式(つまり文法)を知らないと英語でコミュニケーションできない」と、どこかで感じてしまっていますが、体験型授業の中で、小学生は「英語はわからない」と言いながらも、「英語の授業は楽しい」と感じています。
この、体験型授業が小学校で当たり前になりつつある今、その下流工程である中学校の英語教育もその教え方を踏襲し、4技能を問われる全国学力テストに引っ張られる形で、平常時の学力考査も4技能で行うということが「あたりまえ」になっていくでしょう。
一方で、教える側の立場の先生方の英語力が問題視されていますが、それとこれとはまた別の話だと私は思っています。
ネイティブで無い以上、完璧な英語を使いこなすのは多くの人にとっては土台無理な話で、つまり完璧な英語を使いこなしている姿を生徒達に見せることは不可能なのです。大切なのは、純粋な日本人である先生方が、自分の英語力を使ってコミュニケーションしている姿を生徒に見せることです。生徒たちに「先生のように英語を使ってコミュニケーションしたい」と思わせないといけません。そしていずれ、小さい頃からそういう教育を受けている彼らは、今の先生方の言語力を超えていくのでしょう。それは、日本の未来にとってとても頼もしいことではないでしょうか。
「英語のOwnership」というお話がありました。
アメリカ人が使う英語はアメリカ人のもの、イギリス人が使う英語はイギリス人のもの、インド人が使う英語はインド人のもの。これらを「Their English」と呼ぶ、
日本人が使う英語は日本人のもの。これを「My English」と呼ぶ、
国際的に使われている、国際共通語としての英語は、「Our English」と呼ぶ、と。
この「Our English」は、ネイティブも非ネイティブもごちゃまぜにして、お互いが調整しながら作りあう英語力であり、これは、コミュニケーション、つまりインターアクションしないと決して作られることはありません。
この考え方を浸透させ、習い始めは当然完璧ではない英語力をとにかく発信する素地を育てるための学びの環境を作っていかないといけませんね。
中国や韓国、オーストラリアやインドネシア、タイ、ベトナム、マレーシア、フィリピン、シンガポールなど、多くの国々の高校で、第2外国語として日本語が学ばれています。
日本では、英語以外の外国語(第2外国語)を履修している高校生の割合は約1.5%だそうです。
外国では広く日本語が教えられているのに、日本では全然やっていない。これではせっかく外から日本を学んでくれていてもコミュニケーションは成立しないでしょう。
国際人としての第一歩は、「他を受け入れる」ことです。
そのための大きな力が、英語力、あるいはコミュニケーション能力と言えるのではないでしょうか。
(了)